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その人らしい暮らしに寄り添える
訪問看護の価値を、日々感じながら――松原ナースケア・ステーション管理者インタビュー

松原ナースケア・ステーションは、外来・訪問診療を担う松原アーバンクリニックに併設する形で2017年に開設。疾病や障害だけではなく「人をみる」という姿勢を大切に、慢性疾患からターミナルケアまで幅広く在宅療養をサポートしています。
「ご本人もご家族も含めて、〝暮らし全体〟をみている感覚があるんです」
そう語るのは、同ステーションで2022年から管理者を務める板倉さん。脳神経外科、消化器内科、緩和ケア病棟と経験を重ねる中で辿り着いた「訪問看護」。利用者さんとご家族、働く仲間、そして地域全体に目を向けながら看護を続ける板倉さんに、その思いを伺いました。

2025年には松原アーバン居宅介護支援も開設し、「外来診療」「在宅医療」「居宅介護支援(ケアマネジャー)」の三位一体で、地域のみなさまの安心な暮らしに寄り添っています。

 答えてくれた人

板倉夏子

(松原ナースケア・ステーション管理者/看護師)



「誰かを支えられる存在に」
子どもの頃からの思いとともに、看護師の道へ

院内の相談室で伺いました

現在は、訪問看護ステーションの管理者を務める板倉さんですが、そもそも「看護師」を志したきっかけからお聞きしてもよいでしょうか?

小学生の頃、祖父ががんで入院していたのですが、その時に漠然と感じた医療職へのイメージが一つのきっかけだったかなと思います。頼りがいがあって、誰かを支えている。その姿に魅力を感じていました。結局、祖父の最期には立ち会えなかったのですが、そうした後悔の気持ちもどこかにあったのかもしれません。

漠然とした「医療職」から「看護師」を目指すようになったのは、高校時代。部活のマネージャーをしていたのですが、「誰かの助けになれると嬉しい」と感じられて。頑張っている人を支えることが「看護師」のイメージに重なったんですよね。

実際に看護師になってからは、どのような経験を積まれてきたのでしょうか?

最初は、脳神経外科のある総合病院へ入職しました。私が通っていた大学はリハビリテーション病院に隣接していたのですが、脳梗塞や脳出血の方を看護することが多かったんですよね。頑張ってリハビリに取り組む方々に寄り添うことで、ADLが回復していく。そうした実習にやりがいを感じ、急性期での現場ではどのような看護ができるのかを知りたいと思うようになっていました。

その後は病棟編成もあって消化器内科へ異動となり、がん患者さんを中心に担当するようになりました。入退院を繰り返す方が多い中で、お一人、印象に残っている患者さんがいるのですが、その方はかなり状態が悪かったのですが「どうしても家に帰りたい」と希望されたんですね。最終的にはご希望通り退院することとなり、私がお見送りを担当しました。
その後、まもなく亡くなられたのですが、後日ご家族の方がわざわざ病院まで来てくださりって。「あの日、帰れて本当によかったです」と、伝えてくださったんです。その時、ご本人にとって〝家に帰れた〟という事実がどれほど大きかったかを実感しました。

訪問中の時間はすべて「その人のためだけ」に使える

そうした経験から「訪問看護」を志すようになったのですね。

そうですね。ただ、その前に、もう少し深くがん患者さんに関わりたいという思いもあり、当時、訪問診療とともに緩和ケア病棟を運営していた松原アーバンクリニックに転職をしました。

※病棟は2020年に閉鎖

病棟の看護師として終末期ケアに携わりながらも、いずれは訪問看護をしたいという思いはずっとありましたね。そんな中、入職から5年後の2017年に松原ナースケア・ステーションが立ち上がることになり、私も翌年には訪問看護に携わるようになりました。

訪問看護では、利用者さんのお宅へ伺っている時間はすべて〝その人のためだけ〟に使えるんですよね。病棟でももちろん、お一人おひとりに向き合う時間を大切にしてきましたが、それでもやはりナースコールなど、その場で優先すべきことが発生します。だからこそ、訪問先で目の前の利用者さんとじっくり向き合える時間をとても大切にしています。

また、日々の訪問やスタッフからの申し送り等を通して、〝その人らしい生活〟をされている利用者さんが多いことも感じていて。好きな物を食べ、好きなタイミングで入浴し、服装も自由。そうした暮らしを支えられることに、訪問看護ならではの価値を感じています。

ただやはり私たちがサポートできるのは1日のうちのわずかな時間です。多くの場合、ケアの主体はご家族が担います。負担をできるだけ減らせるよう考えたり、逆にご家族が熱心にケアに関わりたいという場合にはご期待に沿えるよう努める。お一人おひとりに合わせた看護を考えていくことが重要だと日々実感しています。

利用者さんご本人だけでなく、ご家族の様子も気にかけることが大切なんですね。

はい、とても大切だと思っています。ただ、私の中ではご本人とご家族を分けるというよりは、「ご本人もご家族」というイメージがあって。ご本人含めて「生活全体」だったり「お家そのもの」を看る感覚が近いかもしれません。

訪問看護という仕事を選んでくれたみんなの
「今」と「これから」を見つめて

その後、どのような経緯で管理者になられたのでしょうか?

4年前、前任者からバトンをもらって管理者を務めることになりました。当ステーション立ち上げ時からの思いを引き継ぎつつ、これまで少なかった若いスタッフを入れていこうというタイミングでもあったので、「訪問看護」という仕事について丁寧に伝えられるようマニュアルを作成したりもしました。

管理者として大切に考えていることは、スタッフみんながやりがいを持って楽しく働ける場所をつくるということ。訪問看護は、基本は利用者さんのご自宅に一人で行くため、判断力が求められたり、一軒一軒訪問するため体力も必要です。この仕事を選んできてくれているみんなに、訪問看護の魅力を感じてもらえるよう、そして、今後どのような道を進んだとしても、ここでの日々が生きる経験ができるようにサポートしたいと思っています。

今後、松原ナースケア・ステーションで取り組みたいことはありますか?

個人的には、疾患や年齢にかかわらず、この街のみなさんが安心して暮らせるようお手伝いしたいという理想があります。そう感じるのは、私自身が世田谷区周辺に20年以上暮らしていて、地域に貢献したい思いが強いからかもしれません。
本来、元気な期間が長く、訪問看護を利用する期間は短いほどいいんですよね。未病の段階から地域のみなさんと交流し、具合が悪くなった時にはご自宅に看護師が伺う体制があるということを伝えていく。現在も区民向けのACP講習会に参加するなどの活動はしているのですが、こうした機会を増やしていけるといいのかもしれないですね。

地域の医療従事者同士のつながりとしては、「松原OPENDAY(勉強会)」や、訪問看護ステーションの管理者同士が集まる「管理者会」などの機会があり、少しずつ当ステーションの存在を知ってもらえています。顔見知りの関係機関が増えていくことは、本当にうれしいことです。
ただ近年、世田谷区では訪問看護ステーションが増え、その分、横のつながりを持つことの難しさも感じています。本当はそれぞれの訪問看護ステーションの強みを生かしながら連携できれば、より多くの住民を支えていけるのだろうと思うんです。

例えば、どこかのステーションで休職者が出た場合に補い合ったり、合同勉強会を開いたり。同じ地域を看る者同士でつながることで、できる支援が増えるはずです。
事業所が多い分、密な連携が難しい面はありますが、ただ顔見知りになるだけではない、一歩進んだ関係性を今後つくっていけるといいなと思います。

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