白根真
(イーク ゼネラルマネージャー)
宮城県仙台市出身。明治大学商学部卒業。(株)ミスミにて、徹底した顧客視点のビジネスモデル「マーケットアウトビジネス」をベースに、医薬品・医療材料のカタログ通販事業に従事。2003年12月メディヴァに参画し、クリニック開業支援、在宅医療事業立ち上げ等に携わる。2007年からはゼネラルマネージャーとしてイークの事業成長を牽引。「自分の家族や友人が安心して診てもらえる医療施設とは?」をテーマに、患者視点の医療変革を目指している。
イークは2007年、先例のない「女性による女性のための健診クリニック」として丸の内に開院しました。以来、多くの女性から支持を集め、2013年にイーク表参道、2019年にイーク有楽町、2020年には男性も受診可能なイーク紀尾井町を開院。年間5万人以上の方へ「最善の予防医療」を提供しています。
今回の話し手は、そんなイークを牽引するゼネラルマネージャー白根真さん。
取材を通して、「女性専用」という1点に頼らないイークならではの強みや、働くスタッフ一人ひとりを大切にする視点が見えてきました。
イークとは
女性医師と女性スタッフによる、女性のための統合ヘルスクリニック。人間ドックや婦人科検診を中心に、受診者へのフォローアップ外来も実施し、働く方々の健康をサポートしています。
答えてくれた人
白根真
(イーク ゼネラルマネージャー)
宮城県仙台市出身。明治大学商学部卒業。(株)ミスミにて、徹底した顧客視点のビジネスモデル「マーケットアウトビジネス」をベースに、医薬品・医療材料のカタログ通販事業に従事。2003年12月メディヴァに参画し、クリニック開業支援、在宅医療事業立ち上げ等に携わる。2007年からはゼネラルマネージャーとしてイークの事業成長を牽引。「自分の家族や友人が安心して診てもらえる医療施設とは?」をテーマに、患者視点の医療変革を目指している。
イークには、他の施設との明確な違いがいくつもあり、それが強みになっていると思っています。
まず「女性専用」という点は、男女共用とは異なる明確な違いの一つです。そしてイークは「患者視点」で発想して医療・サービスを提供していますが、「医療者視点」で発想する場合とも違いが出せていると思います。
また現在、都内に4院開業していますが、「分院ごとの運営をしない」という点も差別化の一つです。イーク全体で統一した運営を行うことで、受診者がどの店舗に行っても同じ医療・サービスを提供でき、受診データも共有しているため、連続性のあるアドバイスができます。
さらに言うと、こうした違いの一つ一つが関係しあっていて、例えば「女性専用」で且つ「患者視点」で発想するからこそ、受診者の立場に立ったホスピタリティーの高いサービスを提供できる。このように違いが重なり合って存在しているというのは、大きなイークの強みになっていると思います。
それはもう「受診者の声を毎日聴く」ということですね。健診後に二次元コードからアンケートに回答いただいているのですが、その結果を踏まえて会議を開いて改善策を検討するフローを15年間続けています。開業して3年間ぐらいは問題点も多く、毎週のように会議を開いていましたが、今は月2回ぐらいのペースです。
アンケートでは満足度を7段階で評価していただき、目標値を7(とても満足)と6(満足)の合計=80%以上と設定しています。今はだいたい83%。この満足度の高さは、しっかり患者視点を実行できている結果だと思います。
例えば、検査をスムーズに行うため検診衣がスカート状になっており、「足元が寒い」という声がありました。そこでレッグウォーマーをご用意したのですが、毎日洗濯しているとどんな布地でもすぐ傷んでしまうんですよね。そこで丈夫な布地を見つけてオーダーメイドで作ったところ、「寒い」という声がなくなりました。受診者の声からサービスにつながった一つの例ですが、すごく良かったなと思っています。
「何のためにこの仕事をしているのか」という上流から「実際の業務」までを、一つの方針でつなげることが重要だと思います。急に「受診者の声を聴きましょう」と伝えても腑に落ちないと思うのですが、医療法人社団プラタナスには「患者視点の医療サービスを提供する」という理念があり、イークにはそれに基づいたビジョンと、それを実行するためのクレドがある(下図「イークのビジョン・クレド」参照)。それを採用面接時はもちろん、年度目標を共有する際にも毎回伝え、さらに人事評価もクレドの要素に従って行い、何度も何度も浸透への働きかけをしています。
例えば検査技師の方の「将来のリスクを必ず見つけ出すんだ」という姿勢など、医療者としての意志の強さを感じる場面がよくあり、尊敬の念を抱くと共に刺激を受けています。
他にも会議やスタッフとの会話の中でも、「それって受診様から見たらこうだと思う」という意見が出てくることが結構あるんですよ。つい先日も閉院時間の18時までに健診が終了しないケースがあったので、16時45分の最終予約枠を15分前倒しにしようという議論があがったんです。そのときスタッフ数名から「会社勤めの方にとって、駆け込みで受けられる16時45分の枠は大事」という意見が出て、「私たちの工夫の中で調整しましょう」ということになりました。みんなが提供者側の視点だけではなく、受診者側に立って議論してくれているというのは、とても頼もしく感じます。
運営においては、意思決定する際に「トップダウン」と「ボトムアップ」を使い分けることが肝だと思っています。例えばイークとしてブレずに実行していきたい経営方針等は、トップダウンで経営者側が決定してスタッフへしっかりと伝えていく。一方で、日々の業務での課題解決や具体的な進め方に関してはスタッフが主体性をもって、どうしていきたいかを決定するボトムアップが重要です。トップダウンはやりがいを削ぐから、ボトムアップで議論しましょうというのは簡単なのですが、スタッフの巻き込み方を間違えると、イークとして大切にしていかなければならないポイントからズレてしまったり、意見がまとまらないということになる。やはり基本的な経営方針、戦略に関わる部分を決めるのは経営者側の役割であり、熱を込めて繰り返し丁寧に伝えれば、必ず納得してもらえると思っています。
受診者にも働く人にとっても心地よい空間で、レベルの高いサービスを提供できる施設は、なかなか無いと思います。非常勤の先生からも「すごく働きやすかったです」と言っていただけたり、受診者アンケートでも「イークさんを受けたらもう他の施設は受けられません」というようなコメントをいただくことがあります。日々の業務の「質の高さ」を実感でき、誇りを持って働ける環境は、そんなにないのではないでしょうか。
恐らく3つあり、1つ目が業務オペレーションが洗練されている点です。スタッフたちが業務を改善し続けているということと、イーク全体でノウハウを共有できるため、より良いものが出来上がっていくんです。
2つ目が「医療の質」で、例えば読影体制も徹底しています。内科医師による1次読影、業務委託している放射線専門医による2次読影、さらに1次と2次で判定が異なる場合は内科医師による3次読影まで実施するなど、質の高い医療を提供できる体制が整っているという点も、評価のポイントだと感じています。
そして3つ目がスタッフのコミュニケーション能力。端末の使い方一つでも説明が丁寧で、マニュアルも痒いところに手が届く内容だったり、医師から依頼しなくても先回りして作業を進めてくれているという声はよく聞きます。
マネジメントでやるべきことはたくさんあると思いますが、まずはやはり「スタッフ一人ひとりの人生」と向き合いたいと思っています。これまで何を大事にして来て、これからどう生きていきたいかということを、仕事と重ね合わせてあげたいと思うんですよね。
最近スタッフによく言っていることは、こうなりたいという目標をしっかり持つということです。その「目標」と、評価する側の「期待値」を合わせておき、定期面談で目標に近づけているかを確認してもらいます。15分でも良いので月1回はそうした面談を実施していく。そこまでして、ようやくその人と伴走できるのだと思います。あとは、本人に内在する力と、目標達成に向けた思いで、人って成長できるんじゃないかな…。私にとっては、スタッフ一人ひとりが目標を達成し、成長してくれることが、事業の成功と同じレベルで嬉しいことで、そこを大切にしていきたいと思っています。
まずは現在、予約業務・結果報告書作成業務など各院バックヤードで行なっている業務を、外部にオフィスを借りて集約し、働く環境を整備すると共に、より多くの受診者向けの業務ができるようにします。
また2025年には渋谷で5院目の開業が決定していたり、オンラインでの健診サービス等、新しい取り組みも検討中で、より多くの受診者を受け入れていく予定です。
スタッフの成長という観点では、これまでも重視してきた「人的資本経営」の考え方を、具体的な施策にまで落とし込んで推進していきたいと考えています。
イークで働くみなさんには、医療者としても、働く女性としても、自分自身の成長を感じながら働いて欲しい。そういった思いはこれまでと変わらず、研修制度や評価制度、人事制度を見直してあるべき姿に整え、スタッフのみなさんがイークでの長期的なキャリアを思い描けるようにしていきたいですね。